学習者の宝
日本語から学ぶ中国語・中国語から学ぶ日本語
王浩智 東京図書
名著の登場だ。中国語を学習する日本人、かなり日本語を使えるようになった中国語を母語とする人に強く勧めたい。
二つの言語の違いを内面からつかまえ直すことができる著者がときどき現れ、学習者にとって導きの灯台となる。英語の一般学習者にとってはマーク・ピーターセンやT.D.ミントン、近年ではマクベイ+大西がその役を果たしてきた。研究者や専門家には当然のことであっても、それを一般向けに書くことには大きな価値がある。
この本のすばらしさを要領よくまとめて伝えるのは難しい。しかし、第一章の「時間感覚」や「空間感覚」を書店で見ただけでも手に入れたくなるだろう
表現したい対象を時系列に沿って「因・行・果」と3つの段階に分けるとする。著者の主張では、日本語は「因」の部分を切り取って対象を表現しようとするし、中国語では「行」に焦点を当てる。
手近な例は日本語の「入院」と中国語の「住院」だ。日本語では病院に入るところ(因)に、中国語では病院に留まるところ(行)に焦点を当てる。
血液を採取して検査するときもこの原則のとおりだ。
「採血」(日)
「验血」(中)
生活面でも
「入浴」(日)
「洗澡」(中)
著者の切れ味は空間の把握でも冴えている。日本料理店の品書きを例にして切り取り方を説明する。
お椀(日)
蚬酱豆腐汤(中)
茶碗蒸し(日)
蒸鸡蛋羹(中)
日本語は外面を切り取ろうとし、中国語はあくまで内容に迫ろうとする。
例に挙げた時間や空間の捉え方はこの本のほんの入口だ。著者の分析は日本語・中国語による考え方に深く入り込んでいく。事例の選び方が秀逸で理解を大きく助けているのも美点。
こうした本を読むと、名著といわれる文法書が立ち入ることができなかった(あえて立ち入らなかった)部分の重大さにため息が出る。今後このような本が増えていくことを強く望む。
当分の間折にふれ読んでいく本になるだろう。
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コメント
こんにちは、Shiraさん。ついにその本を手にしましたね!私はこの本を読んで、目から鱗がボロボロと落ち、自分が新しい境地に足を踏み入れたような感覚になりました。続編の「中国語翻訳作法」もすごいですよ。
投稿: shrimp | 2006.01.16 00:04
お、shrimpさんも読んでいましたか。shrimpさんのサイトのおすすめ教材にはまだ書いていないようですね。ズルイ(冗)。
「中国語翻訳作法」も同時に買い求めました。こちらの本はけっこう大胆ですね。でも、王さんの解説を読んでいるとどの訳例も必然の結果に思えてきます。
投稿: Shira | 2006.01.16 22:37
あの本は誰にも教えたくなくて…。というのは冗談で、私の貧しい日本語力ではあの本の良さを紹介できないんです。とにかく「読んでみて!」としか言えない、そんなすごい本です。私の「中国語翻訳作法」はなんと王先生の直筆サイン入り!です。
投稿: shrimp | 2006.01.16 23:07
そうそう、説明するのが難しい本ですね。
こういう本で勉強した人が教える側に回るまでの時間が待ち遠しい。10年20年の時間がかかると思います。
投稿: Shira | 2006.01.18 20:02